2025/04/01 18:09

日本で採れる宝石鉱物について、前回に引き続き、地球科学社会教育機構理事長である石橋隆先生に日本の宝石鉱物についてお話を伺いました!
日本産のアメシスト/紫水晶について
アメシストはクォーツ(鉱物種名:石英、自形結晶のものは水晶)の宝石種のひとつで、紫色のクォーツをさします。日本国内には各地に水晶を産しますが、その大半は無色または白色です。また、花崗岩中に産する水晶は多くは黒色のスモーキークォーツ(煙水晶)です。アメシストは珍しいうえにわずかで、残念ながら宝飾に用いられる程度に結晶が大きく、鮮やかで濃色のものは産していません。しかし、日本産のものも鉱物標本としてみた場合には産地ごとに産状や色調、結晶の形状の特徴が異なり、愛らしい結晶がみられます。ここでは、いくつかの産地のアメシストを紹介します。
10cm超えの結晶!
知名度が高い産地として、まず挙がるのが宮城県の雨塚山。ここでは江戸時代にアメシストを掘っており、明治以降にも印章の材料として採掘されました。火山岩である流紋岩中の石英脈に産し、やや淡いが鮮やかな紫の伸長した結晶で(図1左側)、10cmを超える長さのものも産しました。次に、栃木県鉛沢産も明治時代から知られます(図1右側、図2)。


鉛沢は足尾銅山の近傍で、流紋岩中の石英脈の空隙にアメシストがみられます。結晶は長く伸びるが先に行くに従って細る傾向があるのが特徴です。
結晶が柱状には伸びていない群晶

栃木県の万珠鉱山では結晶が柱状には伸びていない群晶を産します(図3)。この鉱山は金を目的に採掘し、雨塚山や鉛沢と同様に流紋岩類中の石英脈にアメシストはみられます。これらの産地の他にも金銀、銅などの金属鉱山の石英脈に、しばしばアメシストが産しました。